世界のプロレス探検隊

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新日本プロレス THE NEW BEGINNING in NAGOYA レビュー 鷹木信悟対棚橋弘至他

新日本プロレス THE NEW BEGINNING in NAGOYA 1/30/2021

 

敗者モンゴリアンチョップ封印マッチ
天山広吉対グレート-O-カーン
シングルマッチがめっきり減った天山が、代名詞を賭けて、侵略者に挑む展開。天山は、各種得意技を披露し、パワフルさが出せない分もノスタルジックさを煽るのは正解。対するオーカーンは、侵略者としては小さいものの、天山からモンゴリアンチョップを奪った選手として箔がつくのは良い事。試合も適切に天山のフォローが出来ていて、用心棒役がする試合ではないものの、堅実な仕事ぶりで、ミッドカードのシングルレスラーとしては悪くない。予想以上に見応えはある試合。平均より上。
評価:***

 

ノーDQマッチ
小島聡対ウィル・オスプレイ


 

こんなに純度高いハードコアをやってくれるなら、何でドームのオカダ戦でそれをやらなかったのかと頭を抱える程、エクストリーム度の高い試合。ゴミ缶への投げから始まり、ラダーを使った攻防、ラダーやテーブルを設置した上で、一旦別の方向に気を逸らし、その逸らし方もニュージャックやJJを彷彿とさせるギターショット。それだけに収まらず、ラリアットで場外に橋渡しされているラダーにオスプレイを叩き落とすという、他ならぬ小島専用のハードコアスポットを出してオリジナリティを生み出し、ジャパニーズ・テーブルが木っ端微塵になる程のパワーボムでテーブル破壊、クライマックスも椅子を使った攻防から必殺技フルコースとこのカードでここまで徹底的にやり抜いたのは、意表を突く意味でも天晴れ。

50歳になり衰えたとはいえども、ワンマッチならまだまだ健在な元MLW世界王者、元Voodoo Murdersの小島の剛腕とタフネスさを呼び起こし、見事な凶器使いと通常技の攻防とのミックスに、ハードコア度を上げるハードバンプを繰り返したオスプレイの高い献身性とセンスには天晴れ。低空飛行で始まったユナイテッド・エンパイアを自らの手で軌道に乗せる事に成功した一戦。好勝負に届かない良試合。
評価:***3/4

 

NEVER無差別級選手権試合
鷹木信悟(c)対棚橋弘至

 数年前までは夢にも思わなかったドリームマッチが実現。王者は鷹木だが、団体の象徴に挑むという意味では、試されている立場。ある意味IWGPへの最終関門と言えるだろう。結果からすると鷹木の負けではあるが、答えからすると100点満点で合格となったこの試合。

 待ち構える立場の棚橋ではあったが、そんな事も微塵も感じさせず、全力で潰しに行く形。グラウンドから打撃の攻防を経た後、5分過ぎに早くも脚攻めを導入。棚橋のロングマッチからすれば早い仕掛け。この試合の特筆すべき点は、ただ長く試合をするのではなく、終盤だけではなく、序盤と中盤に意味を持たせていて、ずっと見ていたくなる工夫が散りばめられている点。同時並行で棚橋の脚攻め、鷹木の首攻めと煽り、細かな一進一退と複数の仕掛けを、最高の時間配分と質で行うのだから素晴らしい。簡単に技を決める場面と、スライディング式パンピングボンバーを狙ったシーンに代表される様に、技を決められても耐えてもう一つ攻防を挟む場面と、気合重視の消耗戦でありながら、緻密で多くの引き出しの中から最適なものを選んで繰り出しているのが見事。

 濃密な展開が続く中で、棚橋による場外へのハイフライアタックで中締め。いつもに比べると15分付近に放つのは早いと感じたが、それ程濃密で、ここで劣勢を打開しなければならないという必死さを伝える事に成功。ただそれをやってしまうと終盤が間延びするのではないかと危惧したが、棚橋は鷹木の挑発に対し、キラー・モードで殺しにかかると、そこに更に鷹木が脚攻めをやり返すという掟破り中の掟破りで返していくのは天晴れ。脚攻めの間にもラリアットなど激しい打撃を叩き込むのは忘れず、最高の矢を何本も放ち、その効果が切れる前に、新たな矢を放ち続けるのは見事。そこでも並行して棚橋は脚攻め+得意技で攻勢を強め、テキサスクローバーからハイフライフロー連発、足を引き摺りながらも、鷹木はパンピングボンバーに史上最凶の鋭角さであったMADE IN JAPANまで持ち込み、いつ決ってもおかしくないスリリングな攻防で、勝負論は忘れない。単なるボリュームの傘増しでは届かない圧倒的な熱量と深みを生み出した。

  そして最終盤は、NEVERらしい気合起き上がりや、棚橋が頭突きやラリアットまで見せる程打撃合戦でラストスパート。シンプルかつハードにまとめて、ここでも間違った選択はしない。ドラゴン殺法合戦に、中盤に鷹木が見せた掟破りのツイスト&シャウトは2連発だったが、棚橋は3連発で応えるいじらしさも細かいが見事。直線的な攻防の中に、それぞれが歩んできた歴史、培って来た様々な技術、その歴史や技術を最大限活かす為、タフマッチを実現させる為の素晴らしいフィジカル、心技体が最高レベルで揃った大激戦。

  これでも鷹木は「鷹の爪」という丸め込みやラフ殺法等まだ引き出しを残しているのが末恐ろしい。棚橋も丸め込み使いなので、今後の対戦ではそれも楽しめるだろう。オスプレイ戦同様数え歌化する前に最高の試合を生み出してしまったものの、この内容ならIWGPでも全く問題なし。毎年5スターマッチを生み出し続ける現在世界最高のベストバウトマシーンと化した鷹木が、まだこの位置にいるのが層の厚さを感じる所。この時期ではあるが、ベストバウト最有力候補といってもおかしくはないだろう。
評価:*****

 

全体評価:8.5+