世界のプロレス探検隊

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スターダム OSAKA DREAM CINDERELLA Review 林下詩美対渡辺桃/ジュリア対朱里

STARDOM『スターダム10周年記念イヤー夢の祭典~プロローグ~OSAKA DREAM CINDERELLA』 エディオンアリーナ大阪第1競技場 12/20/2020

ハイスピード選手権試合
AZM(c)対星月芽依
ハイスピードという括りなので、とにかく早さ、目まぐるしさが優先される。素早いロープワーク、ドロップキック連打、丸め込み合戦と定番の攻防が多く入っていた内容ではあるが、アクションを行う事で精一杯だった星月に対し、AZMは、関節技の入れ方や緩急の付け方、オリジナルの丸め込みやロープを使ったスパイク・ハリケーン・ラナの様な独創的でサイズを無効化出来る大技と完全に星月を掌に乗せた見事な戦いぶり。星月もアスリートとしての強さは示していたが、この試合では王者AZMの凄さが凌駕した。ここまでの成長度合いであれば、ハイスピードの括りでもそうでなくても問題なく活躍出来るだろう。中々良い試合。
評価:***1/2


ワンダー・オブ・スターダム&SWA世界 二冠選手権試合
ジュリア(WoS ch)対朱里(SWA ch)
DDM同門対決で2冠戦。中盤以降の物量勝負では、互角の戦いを見せていたが、序盤の作り方、特に朱里というシューティングスタイルに特化した選手、キャリア差やUFCで活躍した技術の差がある相手に対し、ロングマッチ仕様で序盤から中盤までを作り上げるのは難しい。グラウンドや打撃に対応するのでやっとであった。しかし、苦戦はしていても、朱里と比べれば完成度に劣る攻撃を見せていても、技を放った後の立ち振る舞いや色気で、劣っている様に見えないのはジュリアの才能である。鍛え上げられた肉体があり、魅せ方も研究しているだろう。しかしその日頃の鍛錬だけではどうにもならない、持って生まれた天性の才能、スター性がそこで垣間見る事が出来る。朱里が凄い事は皆わかっていて、これまでもこの試合も当然凄い。洗練された攻撃の数々は見応え満点である。しかしそれでもジュリアを中心に回っているのが非常に伝わる。15分時点で終盤の様な展開となっていたが、一進一退の攻防を続けながら、花道での攻防や一つ一つの攻防を、消耗感を強めにする事によって、上手く時間を使い、30分時間切れに辿り着いた格好。
アクション量、激しさは多く、非常に重厚な試合であったが、両選手直線的なスタイルなので、試合展開をスローにする事により、鋭さが失われてしまったのは勿体ない。それこそ新日本ライクな切り返し合戦を入れる、丸め込み合戦で勝負論を強める等の「急」の仕掛けはもう少し欲しかった。只これもジュリアを真のスターにする為の試練。ベルトを持たせて強敵と当てながら、真のスターにする為の過程なので、全く問題なし。神童には神童の育成方法がある。後は新日本らしいタフでハードなロングマッチが増えていく傾向がより強くなる中で、大怪我のみが心配。好勝負に届かない良試合。
評価:***3/4

 

ワールド・オブ・スターダム選手権試合
林下詩美(c)対渡辺桃
QQ同門対決。ワンダー王座に関しては、最多防衛記録を樹立しているものの、ワールド王座に関しては、同門の後輩林下に先を越される結果となった渡辺。その内に秘めた憎しみや怒りが表れる形となったこの試合。序盤こそ林下優位だったが、やるだけやらせて、場外のマットを剥いだ剥き出しの床でのBドライバーで一気に形成逆転。大きなスポットでビッグマッチ感を出しただけでなく、劣勢となっている林下へ煽りながら蹴り飛ばすといった場面を見せる。渡辺の憎しみ、負の感情がわかりやすく表れた事により、よりストーリーが際立つ事となり、渡辺へ感情移入する事となる。この中盤のアクセントにより、林下は耐えてタフネスさを示し、技を豪快に綺麗に決めるだけで価値が生まれる事となる。キャリアの差もあるかもしれないが、リアルも織り交ぜた見事な試合構築を渡辺は見せた。そして得意の蹴りやエルボー連打を効果的に使う事で、その生まれたエネルギーを打撃に乗せて更に昇華する事が出来る。投げも関節技もハイレベルではあるが、この打撃が大きなアドバンテージとなった。タフネスとアスリート能力、バックグラウンドも含めたスター性でスター街道をひた走るスーパーエリート林下に対して、紫雷イオから団体とユニットを託された渡辺桃が、まだやる事は沢山あると身を持って教え込み先輩としての意地を見た。個人的には、2012年、レインメーカーショックで棚橋からベルトを奪った後のオカダ対内藤戦を思い起こした。つまり内藤が初戴冠した時の様に、渡辺がワールド王座を戴冠した時、内藤同様の大爆発を生み出してくれる事を期待したい。その可能性を秘めた今後に期待。
文句無しに好勝負。
評価:****1/4

全体評価:8.5